共病文庫

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社
共病文庫による回想シーンについて
もうこの映画の勝負どころ、肝も肝と言っていいシーンですよね。
ここがコケたら映画全体もコケると言っていいシーン。
初号試写とか心臓が爆発するくらい緊張したんじゃないですかね?
まあまったくの杞憂ですよね。
死ぬほど泣ける。
『でも十分、幸せ。彼と一緒にいられる。そう思えるだけで幸せ』という美少女に言われたいセリフNo.1(思えるだけで、というのがミソ)が頂点。
大人なので声を出して泣くのは我慢しましたが、それでも小さな声でヤダー、ヤメテーとか言いながら爆泣きしました。
このときの浜辺美波さんの声も最高で、そもそもの優れた声質に加えトーンも何もかも完璧だったんじゃないでしょうか。
またこのとき後ろで流れるテーマ曲もがっつり合っていてすごく良い。
後で調べてこの曲の名前も「共病文庫」だと知るわけですが、いまやこの曲を聴いただけで、というかもはやDVDのメニュー画面を開いただけで泣けます。
満開の桜を見に行く約束について
まあ、ホメること以外にないシーンですが、ただ一点だけ語りたいことがあります。
それは最後の約束についてです。
一緒に満開の桜を見に行く約束は、いままでとはすこし違います。
スイーツパラダイスや学校の屋上で『君にしか話さない』と決めたこと、九州へのお泊り旅行、桜良の家へ行くことになった約束などとは違います。
【仲良し】くんに教師になることを勧めたことや共病文庫を受け取る約束ですら違います。
これらは桜良がしたいこと、やってほしいことなどです。
恭子と仲良くしてほしいというお願いとも違います。
これは桜良自身のためというより、生き続ける【仲良し】くんと恭子の二人のためのお願いです。
【仲良し】くんが行くとも告げずにお見舞いに行ったことや、夜中に病院へ忍び込んだこととも違います。
これは【仲良し】くんがしたいこと、したかったことです。
この満開の桜を見に行く約束だけは違うんですよ。
これは二人が一緒にしたいと思ったことなんです。
桜良だけではなく【仲良し】くんだけでもなく、二人で決めた約束なんです。
結果的に最初で最後となった、同時に、同じ思いで、同じ熱量で、二人で一緒にしたいことを決めた唯一の約束なんです。
むしろその日の「やりたいことリスト」は【仲良し】くんがスイパラで書いているくらいなんです。
桜良だけが決めたことではないんですよ。
これだけは違うんです。
でもその約束を果たせなかったんです。

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社
桜良の死は、結果的に連続殺人犯を捕まえたことにつながっているかもしれません。
見方によっては、その死によって他の犠牲者を未然に防いだと言えるかもしれません。
しかしそれがいったい何だというのか。
ニュースではその他大勢で無名の高校生の死だったとしても、最後の夜となった日にやっと二人が到達した、他とは違う大切な約束だったんですよ。