マドリからみる映画『君の膵臓をたべたい』の謎と妄想

真実と挑戦と膵臓

映画「君の膵臓をたべたい」メイン画像05

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

屋外での撮影について

屋外での映画撮影は天気とか、時間とか雑音とか撮影許可とかエキストラさんとか弁当とか待機場所とかトイレとか駐車場とか移動とか、本当にもう色々大変ですよねえ。

特に屋台や商店街、参道を点で描写していくようなシーンは、演出効果はもちろん大きいんですけど手間や時間のわりに使える尺は短いため本当に大変だなあという感じです。
いや、こういうシーンって役者さんたちも良い表情をしているしお世話になったお店のためにもできれば長く見せたいんですけど、そうすると映画としてすごくテンポが悪くなってしまうので、編集で泣く泣く短く切らざるを得ない。

映画「君の膵臓をたべたい」太鼓橋

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

もちろん映画「ダークナイト」の病院爆破シーンみたいに、一瞬のカットのために莫大なお金と労力を使うことなんてざらにあります。ただこういう点描していくシーンはそれとは違ってスゴい!とか思われないんですよねえ。

 

「真実か挑戦」について

まあともあれ、九州への楽しい楽しいお泊り旅行です。
普段の浜辺美波さんなら言わなさそうな『駅弁うんっま!』やらなんやらあって、ついにホテルにたどり着きます。

外観にHiltonとありますが、部屋の中も実際に「ヒルトン福岡シーホーク」さんが使用されたようです。
エグゼクティブデラックススイートキング」という十二単衣みたいな名前の部屋がそれらしいんですが、広さはなんと139平米、宿泊料金は1泊 145,996円+消費税11,680円(執筆時の最安値)。
残念ながら間取り図は無く、また内装も撮影時とは違う様子なので何とも言い難いですが、凡人には80歳まで生きても泊まれなさそうな部屋なのは間違いありません。

そんな地上32階の舞台で行われるのが悪魔のゲーム「真実か挑戦」。

映画「君の膵臓をたべたい」ホテル真実か挑戦画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

いや冗談じゃなくこの場所でこれ以上に相応しいゲームは無いんじゃないかと思います。
そして注目すべきはやはり最後のゲーム。

選択を変えた【仲良し】くんに桜良は『ずるい』とつぶやくように言い放ちますが、つまり「真実」に答えなかったことでむしろ「真実」が暴かれてしまったという場面です。
まさしく悪魔のゲームですよね。

それでは何がずるいかというと、ルールよりも自分を守ることを優先したことですよね。
そして何が真実なのかというと、彼はいざとなると恐怖から逃げるということ。
いうなれば、心の図書館に臆病という「真実」を隠してしまうのです。
それは何の解決にもなっていなくて、結局彼女はもちろん自分のためにすらならない行為です。

この傾向はこのあとも続いて、最終的には桜良に『その人は臆病だから葬式には来ないかもしれないけど』などと感情も行動も読まれてしまいます。
つまりこのシーンは彼のマイナスの特徴が非常によく出た場面なんですよね。

しかしこれはやはり難しいところでもあって、つまり彼の強さと表裏一体でもあるわけです。
逆にいえば恐怖を隠しながら平気な顔を続けているともいえるわけです。
例えるなら「真実」を選ばない弱さはあるかもだけど「挑戦」を選ぶ強さはあるんです。
そしてそれが桜良に日常を与え続けている要因にもなっているんですよね。
彼の立場でいえばこれは非常に難しいバランスでもあるわけです。

ただ、そうだとしてもルールを破るのはやはり違う。
言わなければいけないときに言わないのは違います。
桜良のいうとおり『ずるい』んです。

映画「君の膵臓をたべたい」ホテル桜良画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

もしかしたら桜良もすこしずるいかもしれません。

死の恐怖についてはいままで語らないで楽しく過ごしてきたんです。
【仲良し】くんだってそれでいい、日常を守ることが大事なんだと思っていたはずです。
だからこそ少なくない量の薬を見たことも、聞くチャンスはあったけれど、黙っていたと思うんです。

それをいきなり、その壁をハンマーで粉々にするような行為に出たんです。
ゲームに勝ったにもかかわらず「真実」を言ってしまったのです。

これは病人としては平気な顔が必要だけど、桜良個人としては壁を壊したいというある意味わがままな選択でもあったと思うのです。

しかしこれも桜良の気持ちを考えれば分かりますよね。
せっかくのお泊り旅行で、しかも幸運にもエグゼクティブデラックススイートキングに泊っているのに、クラスで三番目とか言うし面接みたいな質問しかしないし。
そのくせお姫様抱っこはするし。
楽しい夜ももうおしまいともなれば、壁なんて壊して甘えたくもなりますよ。

ただ残念ながら、ベッドで一緒に寝はしたもののお互いの気持ちはズレたまま、あるいは逆を向いたままとなってしまいます。

映画「君の膵臓をたべたい」ホテルベッド画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

 

北村匠海さんについて

ここでわずかながら【仲良し】くん役の北村匠海さんに触れたいです。

まずはなんといってもその声ですよね。
ほんのすこしかすれたようなやさしい声質はもちろん、気持ちいいレベルまでトーンを低く抑えて、そして短く途切るような喋り。
おかげで同じセリフを何度も聞いても飽きないし、本当にいいですよね。

映画「君の膵臓をたべたい」北村拓海画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

あとはやはり受けの演技が多くて大変だろうなあとか思うんですが、非常に細かい動きなどで工夫されていて、浜辺美波さん(海と波コンビ)やこの映画の持つ魅力を最大限に引き出していて本当に素晴らしいです。
そして女性ファンから見たらもちろんすごいイケメンなんでしょうけど、男から見たら髪型のせいもあって『まあうん、素敵な子だったかもしれない』くらいなのもいいですよね。

映画「君の膵臓をたべたい」バスルーム画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

 

桜良の変化について

真実と挑戦の一夜が明けて、その帰り道の「福博であい橋」。
大道芸を名残惜しそうに見ながら歩いていますが、昨夜の桜良によるいきなりパンチが意外と効いたのか【仲良し】くんが素直です。
桜良としては失敗に思われた言葉が案外効いてて嬉しかったかもしれませんね。

でも、ここで考えたいのは桜良の変化についてです。

彼女の『君の膵臓をたべたい』が『私の膵臓、君がたべてもいいよ』と意味はもちろんカタチすら変化してしまっています。

桜良は言葉の使い方がやはり上手で、例えばこのお泊り旅行自体も『君が死ぬまでに行きたいところ』という発言をテコにして実現させています。
このときも微妙な言い回しで照れ隠しをしつつ、要するに「魂となって君の中で生き続けたい」と伝えています。
またこのあとのセリフになるんですが、そのときはハッキリと『私、生きたい』と語っています。

映画「君の膵臓をたべたい」夕日桜良仲良しくん画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

学校の屋上での『天国で会おうよ』とはすこし違う感じがしませんか?
つまりこの間、桜良の心境が激変しているんじゃないでしょうか。

そもそも桜良というのは死についてはあきらめていたとも言えます。
死ぬのは仕方ない、その代わりそれまで日常を楽しもうというような。
死とはすこし違いますが病気についても同様で、神社(太宰府天満宮)にて『いまさらそんなお願い事しないよ』『治んないっつーのにね』と二度も同じような否定的な発言をしています。

つまり九州という生まれて初めての土地に来て【仲良し】くんと一緒に過ごしたのが、生き続けたいと思うほど楽しかったんじゃないですかね?

そして桜良の人生はここから方向性が変わって、もちろん日常を楽しく過ごしたいのは変わらずでしょうが、それとは別に生き残るための「挑戦」も始めたんじゃないかと思うんです。

ちなみにその神社でのおみくじですけど、大吉が出て『病、やがて治る』と占われます。
そして結論だけを先にいえば、実際に桜良は膵臓の病気では死にません
また、末吉の運勢は「目下は好運でなくても後(=末)に吉となる運勢」とされていることが多いみたいです。
なかなか当たっているんじゃないかと思うんですけど、いかがですかね?

映画「君の膵臓をたべたい」おみくじ画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

さてさて、楽しい楽しい九州のお泊り旅行もここでおしまいです。
しかしご存知のとおり、九州はもちろん旅行自体も二回目はありません。

その代わりといってはなんですが、悪魔のゲーム「真実か挑戦」はもう一度ベッドの上で行われます
そしてまさしく悪夢のような結果を生むわけですが、それについては別の項で。

いやあ、それにしてもこの大きな橋から歩道にかけての桜良の笑顔・真顔・笑顔・真顔の変化というかグラデーションは抜群に良いですよね。
夕日の中の横顔とか最高です。

映画「君の膵臓をたべたい」夕日桜良横顔

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

これに勝てるクラスの1番と2番はどんな顔してるんでしょうかね。

 

<< 前へ       次へ >>