マドリからみる映画『君の膵臓をたべたい』の謎と妄想

青春映画に必要なものと桜良に必要なもの

映画「君の膵臓をたべたい」メイン画像04

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

教室・屋上・体育館について

まあ、二人だけの秘密のためにクラスメイトたちから揶揄われたりするのってむしろ超羨ましいとか美少女に『こらこら、そんな難しい顔をするんじゃない』と言われることは一生無いんだろうなとか仲良しな子の女友だちに嫉妬されるのってどんな気分なんだろうとか、色々ありますけど。

映画「君の膵臓をたべたい」教室画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

この青春映画に必要なアイテムが勢ぞろいしたような一連のシーンでまず注目したいのは、受け手側である【仲良し】くんについてです。
このシークエンスと対になっているスイーツパラダイスもそうでしたけど、強い言葉なら強い言葉ほど、得てして受け側のほうが重要だったりしますよね。

【仲良し】くんは教室と屋上と体育館でハッキリと変化していきます。

教室ではいたたまれなくなって出ていってしまい、屋上では巻き込まないでくれと言い放ちますが、体育館では間違っていることだから気にしていないと語る。
もちろんそれは屋上での桜良との会話が原因に間違いないですけど、それではその中の何が彼の心を動かしたんでしょうかね?

桜良のあまりにも直球な『死ぬよ』発言かもしれないし、彼女の置かれている状況かもしれないし、彼女の覚悟を知ったからかもしれないし、自分が選ばれたことかもしれないし、その全部かもしれない。

映画「君の膵臓をたべたい」体育館

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

まあ分からないです。
個人的には「桜良があまりにも眩しかったから」とかで十分だと思いますけど。

けっこう高い階段を長いセリフ(特有のやさしい声質と完璧なリズムやトーン)に合わせて上っていくという、大変そうなカットでしたもんね。
「蒲田行進曲の階段落ち」と同じノリで「キミスイの階段上り」と呼びたいくらいです。

映画を見るのが2回目以上にもなると、『ほら、天国で会おうよ』と青空の中で笑っているところとか時間よとまれと思いますよね。
浜辺美波さんに感謝ですね。

仮に桜良がスイーツパラダイスで残りの時間を一緒に過ごす人を決めたのだとしたら、【仲良し】くんはこの屋上でそれに付き合う覚悟を決めたのかもしれません。

 

【仲良し】くんのもうひとつの資質について

それから注目したいのが、桜良は直接的には残りの時間を一緒に過ごしてほしいなどとはお願いしていないこと。
『君にしか話さないって決めたんだ』『でも君だけは違う』と自分ルールとか彼の特徴とかをただ挙げただけで逆に強いメッセージを送っています。

『巻き込まないでください』と言われたからかもですが、あくまでも【仲良し】くんの言葉の感受性を信用して、そしてその意思や選択に最後は任せているんです。
口に出すところと口に出さないところの二重の意味で【仲良し】くんを信頼しているのが分かります。

たしかに【仲良し】くんの「平気な顔」というのは、彼の心の強さの現れでもあり、桜良も驚異的に思っています。

しかし言ってしまえば、桜良にとっては自分が病気だから必要な能力なわけです。
後天的な理由と言っていいのか、もしも病気じゃなかったとしたら桜良はそれをどう思ったのか。

逆に「感受性」については実は、病気に関係なく桜良がずっと欲しがっていたものではないでしょうか。
桜良はこの屋上に限らず、むしろ時間が経てば経つほど優れた言葉遣いや独特の言い回しを連発していきます。
しかしそれは主人公だからではなく、元々桜良が持っていた資質であり、しかも受け手である【仲良し】くんを選び信用したからこそだと思うんです。

ともあれ、この屋上のセリフもそうなんですが、一見桜良は「平気な顔」をし続けられるという理由だけで【仲良し】くんを選んだように感じます。
しかし実は桜良固有の理由としては「感受性」のほうであって、むしろこのあとはどちらかといえば「平気な顔」を崩す方向に進んでいくように思われます。

このあとの出来事を考えると「日常」に収まっているとは思えませんし。

映画「君の膵臓をたべたい」屋上桜良と仲良しくん

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

さらにもうひとつだけこの項で簡単に付け加えておきたいことがあります。
桜良は【仲良し】くんだけが日常のことも病気のことも語れる相手と言いますが、実はもうひとつ同じように語れる存在があります。

それは共病文庫です。
病気と共に生きるという意味で名付けられたこの日記には、日常のことも病気のことも同じように書き込めます。

つまり逆にいえば、どこまで自覚的かは別にして、桜良は共に生きることができる相手を共病文庫以外に新たに発見したとも言えるかもしれません。

 

【仲良し】くんと恭子について

さて、この屋上も例によって二度出てきます。
二回目は【仲良し】くんと恭子の直接対決です。

映画「君の膵臓をたべたい」屋上恭子と仲良しくん画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

【仲良し】くんと恭子が実は似た者同士(ちなみに恭子は家業が花屋)で共に桜良へ引き寄せられていること、そしてその桜良の根本的な優しさが分かるシーンでもあります。
ここの『君は本当に彼女が好きなんだね』という返しのセリフは最高にグッときます。

また、恭子は『中途半端な気持ちで近づくのはやめて』『あの子を傷つけたら絶対許さない』などと彼に強く告げますが、そうすると逆に桜良の秘密のことは万が一にも言えなくなるという矛盾。

映画「君の膵臓をたべたい」屋上仲良しくん画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

恭子が屋上に来た場面というのは、病院で『僕と友達になってください』の練習を見たあとなので、もしかしたら何かを期待していたのかもですが、これではなかなか難しいですよね。
本当は【仲良し】くんと恭子は、まったく同じ方向を向いた、唯一無二の同士になれたはずなのに切ないですよね。

映画「君の膵臓をたべたい」屋上恭子画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

ちなみにその病院や九州でのお泊り旅行で恭子のことをお願いするときは、桜良は独特の言い回しなどは使わず、直接的な言葉でお願いします。
自分以外のことはわりと直球という、なんとなく彼女の性格の一端が分かる一例ですね。

映画「君の膵臓をたべたい」ホテルお願いする桜良

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

しかし恭子役の大友花恋さんもかわいらしい人ですよね。
けっこう怒っていることが多い役ですが嫌な感じまでは全然しない。
もしかしたらコメディにも向いているのかもしれません。

最後ですが、この教室や廊下は豊郷小学校旧校舎群(窓が超カッコいい)、屋上は新校舎である豊郷小学校で撮影が行われたようです。
屋上には関係者しか入れない様子なので、あこがれの「キミスイの階段上り」をやるなら別の場所でですね。

 

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