マドリからみる映画『君の膵臓をたべたい』の謎と妄想

スイーツパラダイスへいこう

映画「君の膵臓をたべたい」メイン画像03

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

浜辺美波さんについて

「この図書館が映像的にこの映画を成立させている」などと書きましたが、実際にお客さんを映画館に呼び寄せたり魅了したりしているのは、やはり役者さんたちの映像的な価値とか声とかパーソナリティとかのほうが圧倒的に大きいですよね。
少なくとも図書館が見たいから映画を見に行く人なんていないです。

それにしてもまあ、桜良役の浜辺美波さんのかわいいこと美しいこと
彼女の魅力が完全にそのまま映画の魅力にもなっているし、また喪失感にも繋がっていると思います。
ファンの方々はどういったところを好きになったんですかね。

個人的には役者さんとしての一番の武器、というかこの映画を見て一番印象的なのは笑顔と真顔のギャップかなあと思っています。
野球に例えるとすごく落差のあるフォークボールを投げられるみたいな。
またその決め球があるからこそ、たくさんの繊細な技術も活きている感じがします。

映画「君の膵臓をたべたい」浜辺美波画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

そしてその笑顔と真顔の落差が作品の内容ともシンクロしていくわけですが、そんな浜辺さんの魅力を味わうのにまずオススメなのが、このスイーツパラダイスでのワンシーン。

【仲良し】くんが女の子について、その好きになった理由を告白するところです。
いやもう本当に個人的にこのシーンが大好きで、好き過ぎてこの部分だけ何十回もリピートした結果むしろ飽きるというくらいお気に入りのシーンです。

 

好きになった理由について

やはり桜良はこの「好きになった理由」を聞いたときに確信したと思うんですよね。

自分の選択は間違っていなかったと、驚きと興奮と感動をもって。
あるいはついに見つけたぞ、というような。
これを聞いた瞬間、残りの時間を【仲良し】くんと過ごすべきと確信したと思うんです。
このあとの『男を見る目』の会話からしても間違いないんじゃないでしょうか。

映画「君の膵臓をたべたい」男を見る目が無い画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

ともかくおそらく、桜良の人生に影響する言葉だったと思うんですけど、それがケーキバイキングを選んでいる、いわば立ち話の中で語られるというのも素晴らしい。
人生で重要な選択とか答えとか、そういうのってむしろこういう何気ない瞬間に潜んでいたりして、問題なのはそれに気付けるかどうかだったりしますもんね。

そしてこのときの浜辺美波さんの表情も最高です。
仮に何十回もNGを出す鬼監督だったとしても「それだ!」と言ったと思います。

ただ、このときのセリフは結構長いこともあって、具体的にどの部分でグッときたのかちょっと念のため確認しときたくないですか?

色んなものに敬意を忘れない子を好きになったからではないですよね。
なんにでも「さんを付ける人」を好きになったからでもないと思います。
つまり素敵な子を好きになったからではない。

そうではなくて、ちょっとした言葉遣いから人格を想像して好きになるという高い感受性、ロマンチストぶりを素敵と桜良は言ったんだと思います。

そもそも桜良が彼に強く興味を持ったのは、病院で共病文庫を拾われた時です。
このときは「平気な顔」に驚いて興味を持ったと思います。
そしてこの日の待ち合わせ場所でも、なぜ「平気な顔」でいられるのかという質問に「お門違い」のセリフで返されたときも感心したような表情を見せます。

映画「君の膵臓をたべたい」日曜11時待ち合わせ画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

ただこれらはどちらも結局は「平気な顔」についての興味です。
「好きになった理由」はそれとは全然違う。

つまり「平気な顔」と「高い感受性」という相反するような能力を彼は併せ持っていて、それを桜良は発見し、自分に必要だと感じたということですよね。

さらにここで彼の心の壁がどういう性質を持っているかも窺えます。
つまり中にあるものは外に出さないという壁の強さはあるけれど、外からやって来るものを弾き返すような、拒むような種類の壁ではないということです。
なんというか、吸収性はあるんですよね。

例えば彼は他人にどう思われようと気にならないなどとうそぶきますが、正確には他人にどう思われようと「自分の心さえコントロールできれば」気にならないということではないかと思います。
強いは強いですがあくまでも内向きであり悲しくもありますよね。

ちなみに桜良はこの時点で、【仲良し】くんがあの図書館のあの膨大な本の分類を終わりつつあるというのを知っている、というのも一応心に留めておきたいです。

桜良が亡くなった高2の6月時点で残りわずかの分類を放り出したということは、彼は高校1年生の1年間だけで最低でも七、八割の分類を終わらせている計算になるのではないかと思います。結果的に、その後12年間変更の必要のないほどの精度を誇り、当然ながらその期間学生たちのためにもなったこの密かな行為を、桜良がどう見ていたのか。

単にイタズラしてやりたいだけではなかったと思うんですけど、いかがですかね。

 

カメラワークについて

このシーンについてはカメラワークについても言及したいです。

このカットは比較的長回しの上に望遠レンズで撮っていて、前後左右に動く役者さんたちやそのセリフ、リアクションにカメラのピントを合わせていってる。
横にパンしながら手前から奥にいる人物にピンを合わせるとか、特に映画館の大きなスクリーンに耐えうるレベルでドンピシャに合わせていくのはなかなか難しいです。

役者さんたちが重要なシーンを熱演しているわけですから、失敗は許されないという現場のプレッシャーもすごいでしょうし、もちろんすべて手動なわけですし。

まあこれぞ職人芸って感じですね。
そのおかげで登場人物たちの気持ちが切れることなく伝わってきて、特に桜良の軽い気持ちで聞いてみた→決定的な答えが返ってきたみたいな感情の流れが分かりやすく、またさらに感動的になったと思います。

この映画は回想シーンが多いこともあり、カメラワークやらカット割りやらも非常に凝っているんですが、特にワンカット内で収めようと長回ししているカットは重要な意味を持つシーンだと思って間違いないです。

 

スイーツパラダイスについて

あとは、この店舗自体をマドリマニア的に見た場合どうなのか?

まあムリヤリ建築的というかインテリア的にいうと、差し色みたいな存在になっているのかなあという気がしなくもないです。
全体的にこの映画はトーンというか色調が抑えられていると思うんですけど、その中では異色と言えるほど真っ赤な内装で、テーブルや椅子などもかわいらしいですよね。

映画「君の膵臓をたべたい」スイーツパラダイス店内画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

こういう場所ではテンションが高いときにはより高くなる気がしますが、気後れするときにはより気後れしそうです。
さすがの【仲良し】くんも心の壁がすこし崩されてしまっていると感じられます。
なんか桜良の作戦勝ちって感じがしなくもないですけど。

映画がらせん構造になっていることもあり、またそれぞれが対になっていることもあって、このスイパラも前半と後半の二回出てくるわけですが、1回目では好きになった人のことを「告白」させられた上に、「仲良くしていること」をあとで自覚させられる場所でもあります。

そして2回目の物語の後半では、【仲良し】くんの桜良に対する最も重要な「告白」が行われ、さらに二人の関係が「決定的に変化した」のをあとで自覚させられる場所でもあります。
ただ非常に残念なことに、1回目と2回目では全然違う気持ちで退店することになるわけですけど。

映画「君の膵臓をたべたい」携帯画像

(c) 2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社

さて、このスイーツパラダイスも、女子には有名みたいですが、実在する店舗です。
全国チェーンされているお店ですが、撮影に使用されたのは京都にある「スイーツパラダイス四条河原町店」。
そもそも大人気店で普通に行列ができるお店みたいですが、図書館のある滋賀県の豊郷小学校旧校舎群からも行ける距離なので、興味のある人はまとめていかがでしょうか。

もちろん男性同士あるいは男性一人で行くにはかなり強い心の壁が必要ですけども。

 

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